歯科コラムcolumn

自由診療での根管治療をおすすめしたい理由2026/05/21

【武蔵小金井】根管治療後の再発にお悩みの方へ|歯を残すための精密根管治療と歯根端切除術

はじめに:何度も繰り返す根の治療、それでも歯を残したい方へ

「根の治療をしたはずなのに、また歯ぐきが腫れてきた」

「噛むと痛い感じが残っている」

「歯ぐきに白いおできのようなものができ、膿が出る」

「他院で、もう抜歯しかないと言われた」

「根管治療を何ヶ月も続けているのに、なかなか終わらない」

武蔵小金井駅周辺にお住まいの患者様からも、このような根管治療に関するご相談をいただくことがあります。

根管治療とは、一般的に「歯の神経の治療」「根の治療」と呼ばれる治療です。むし歯が深く進行して神経まで感染した場合や、過去に神経を取った歯の根の先に膿がたまった場合に行われます。

根管治療の目的は、歯の内部に入り込んだ細菌や感染物質をできる限り取り除き、根の中を清潔にしたうえで、再び細菌が入り込まないように封鎖することです。うまく治癒すれば、抜歯を避け、自分の歯を長く使える可能性があります。

しかし、根管治療は歯科治療の中でも特に難易度が高い治療の一つです。歯の根の中は、肉眼では見えないほど細く、暗く、複雑な形をしています。一本のまっすぐな管ではなく、途中で曲がっていたり、枝分かれしていたり、根管同士がつながっていたりすることもあります。

過去に治療を受けた歯では、古い薬や土台が入っていたり、根管が石灰化して詰まっていたり、器具が折れて残っていたりすることもあります。そのため、根管治療後に再発した歯をもう一度治療する場合、単に「もう一回根の治療をする」というだけでは不十分なことがあります。

なぜ再発したのか。

どこに感染が残っているのか。

歯を残す価値があるのか。

最終的な被せ物まで含めて、長く使える見込みがあるのか。

これらを精密に診断する必要があります。

武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科では、できる限り歯を残したいと考える患者様に対し、マイクロスコープ、歯科用CT、ラバーダム防湿、ニッケルチタンファイルなどを用いた精密根管治療をご提案することがあります。

さらに、通常の再根管治療だけでは改善が難しい場合には、歯根端切除術という外科的な選択肢を検討できることもあります。

この記事では、根管治療が再発する理由、日本の保険診療における根管治療の現状、自由診療による精密再根管治療で何ができるのか、歯根端切除術とはどのような治療なのか、そして論文上どの程度の治癒率が報告されているのかを、患者様にもわかりやすく解説します。

根管治療後に再発が起こる理由

根管治療後に痛みや腫れが再発すると、「前の治療が失敗だったのではないか」と感じてしまう方も少なくありません。

もちろん、治療の精度が影響することはあります。しかし、根管治療の再発は、単純に一つの原因だけで起こるものではありません。

根管治療で最も重要なのは、根管内の細菌をできる限り減らし、再感染しにくい状態を作ることです。ただし、歯の根の中を完全な無菌状態にすることは現実的には難しく、治療の目的は「細菌の数を、身体が治癒できるレベルまで減らすこと」と考える必要があります。

再発の原因として多いのは、根管内に感染が残っているケースです。根管は非常に複雑で、器具が届きにくい部分があります。特に奥歯では、根管の数が多く、入り口も見つけにくいことがあります。

上の奥歯では、肉眼では見つけにくい4本目の根管が存在することもあり、そこに感染が残ると再発の原因になります。

また、治療中に唾液が根管内に入ることも再感染の原因になります。唾液の中には非常に多くの細菌が存在します。せっかく根管内を清掃しても、治療中に唾液が入ってしまえば、新たな細菌を根の中に入れてしまうことになります。

そのため、精密根管治療ではラバーダム防湿を重視します。ラバーダムとは、治療する歯だけをゴムのシートから露出させ、唾液や舌、頬粘膜と治療部位を隔離する方法です。

さらに、根管治療後の被せ物や土台の状態も重要です。

根管治療そのものがうまくいっていても、被せ物の隙間から細菌が入り込むと、再び根管内が感染してしまうことがあります。根管治療は、根の中をきれいにして終わりではありません。最終的な土台や被せ物の精度、噛み合わせの管理まで含めて、初めて長期的な予後につながります。

歯が割れている場合も、再発の大きな原因になります。

歯根破折といって、歯の根に縦方向のヒビや割れが入っている場合、そこから細菌が入り込み、炎症が続きます。この場合、根管治療を繰り返しても治癒が難しいことがあります。歯根破折が明らかな場合は、抜歯が適切になることもあります。

日本の根管治療の現状

日本の保険診療は、誰もが一定水準の医療を受けられる非常に大切な制度です。根管治療も保険診療で受けることができ、多くの患者様が保険診療によって痛みを取り、歯を残す治療を受けています。

一方で、保険診療には制度上の制約があります。治療にかけられる時間、使用できる材料や器具、診療報酬の設定などが決まっているため、すべての症例に対して十分な時間と設備を投入できるわけではありません。

この点について、日本の歯内療法の現状を考えるうえでよく引用されるのが、当時の東京医科歯科大学の須田英明先生による「わが国における歯内療法の現状と課題」という総説です。

この論文では、2009年の1年間に行われた永久歯の抜髄・感染根管治療の保険診療請求件数が、推計で1,350万件以上にのぼるとされています。さらに、東京医科歯科大学むし歯外来における調査では、根管処置が施された歯において、根の先の炎症を疑う根尖部X線透過像が高率に認められたことが報告されています。

ここで注意したいのは、この論文は「保険診療の根管治療成功率を直接追跡して何%と示した研究」ではないという点です。あくまで、根管処置済みの歯に根尖部X線透過像がどの程度見られるかを調査し、日本の歯内療法の現状と課題を考察したものです。

したがって、「日本の保険根管治療の成功率は何%です」と単純に断定するのは適切ではありません。

ただし、根管処置済みの歯に根尖部X線透過像が高率に認められるという事実は、日本の一般的な根管治療において、治癒が十分に得られていないケースが少なくないことを示唆しています。

根尖部X線透過像がある歯のすべてが治療失敗というわけではありません。治癒途中のもの、瘢痕治癒、被せ物からの再感染、噛み合わせの問題、歯根破折など、さまざまな要因が含まれます。それでも、ヨーロッパ歯内療法学会の基準では、根管処置後4年の時点で根尖部X線透過像が完全に消失していなければ失敗と判定する考え方も示されており、日本の根管治療の現状には課題があると考えられます。

また同論文では、ラバーダム防湿の使用状況についても触れられています。根管治療においては、唾液中の細菌を根管内に入れないことが非常に重要です。しかし、ラバーダムを「必ず使用する」と回答した割合は、一般歯科医師で5.4%、日本歯内療法学会会員でも25.4%にとどまったと報告されています。根管治療における無菌的処置原則が十分に守られていないことが、日本の根管治療成績に影響している可能性があります。

つまり、日本の保険診療が悪いということではありません。

保険診療は、多くの患者様に医療を届けるために必要不可欠な制度です。しかし、根管治療のように非常に細かく、時間と設備を要する治療では、制度上の制約が治療の精度に影響することがあります。特に再発症例や難症例では、保険診療と同じアプローチを繰り返すだけでは限界がある場合があります。

このような背景から、再発した根管治療に対しては、マイクロスコープ、歯科用CT、ラバーダム防湿、ニッケルチタンファイル、十分な治療時間を用いた精密再根管治療を検討する意義があります。

保険診療は「悪い治療」ではなく、国民全体を支えるための制度です

ここで、保険診療について大切な前提を整理しておきます。

保険診療は、決して悪い治療ではありません。日本の公的医療保険制度は、世界的に見ても非常に重要な制度です。厚生労働省は、日本の国民皆保険制度について、誰もが安心して医療を受けられる医療制度を実現し、日本の平均寿命や保健医療水準の向上に大きく貢献してきたと説明しています。

つまり、日本の保険診療は、国民全体に医療を届けるための社会的なセーフティネットとして、非常に大きな価値を持っています。

特に歯科医療において、日本は多くの治療を保険診療で受けられる数少ない国の一つです。海外では、歯科治療の多くが自己負担となり、費用面の問題で受診が遅れることも珍しくありません。OECDの報告でも、多くの国では歯科医療の公的カバーは限定的であり、平均すると歯科医療費のうち政府や強制保険が負担する割合は3分の1未満にとどまるとされています。

その意味では、日本の歯科保険制度は評価されるべき制度です。むし歯になったとき、歯が痛くなったとき、入れ歯が必要になったとき、比較的少ない自己負担で治療を受けられることは、患者様にとって大きな安心につながります。

一方で、保険診療は「その時点で考えられる最高水準の治療を、すべての症例に対して提供する制度」ではありません。

国民全体に広く医療を届けるためには、費用、材料、治療方法、診療時間に一定のルールや制限が必要になります。ここが、保険診療と自由診療の大きな違いです。

少し強い言い方をすれば、保険診療は「すべての患者様に、必要な医療を公平に届けるための制度」です。最高水準の材料、最高水準の設備、十分な時間、審美性、個別最適化までをすべて含む制度ではありません。

ここでいう「最低限」という言葉は、雑な治療や質の低い治療という意味ではありません。国民全体を支える制度として、医学的に必要な範囲を定め、限られた財源の中で公平に医療を届けるという意味です。

たとえば、歯を失った場合、本来であればインプラント治療が有力な選択肢になることがあります。噛み合わせ、骨の状態、隣の歯への負担を考えたとき、ブリッジや入れ歯よりインプラントが適しているケースもあります。しかし、インプラント治療は原則として自由診療です。

歯並びや噛み合わせに問題がある場合も同じです。矯正治療によって歯並びや噛み合わせを整えることは、見た目だけでなく、清掃性、噛む力の分散、将来的な補綴治療の安定性にも関わります。しかし、一般的な矯正治療は保険適用外です。保険診療の対象となるのは、厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常、顎変形症の手術前後の矯正など、限られたケースに限られます。

セラミック治療も同様です。歯科治療において、被せ物や詰め物の材料は非常に重要です。見た目の美しさだけでなく、汚れのつきにくさ、適合精度、変色のしにくさ、金属アレルギーへの配慮、長期的な安定性などを考えると、セラミックやジルコニアが適しているケースは少なくありません。

しかし、保険診療では使用できる材料や適用部位に制限があります。近年はCAD/CAM冠など、保険で使える白い材料も増えていますが、自由診療のオールセラミックやジルコニアと同じものを、すべての症例で自由に使えるわけではありません。

これは、インプラントや矯正、セラミックが「ぜいたく品」という意味ではありません。

医学的、機能的、審美的に考えれば、それらが適切な選択肢になるケースは数多くあります。しかし、公的保険制度は、すべての症例に対して最高水準の治療を無制限に提供する制度ではありません。だからこそ、保険診療と自由診療の役割を分けて考える必要があります。

根管治療においても、この違いは大きく影響します。

保険診療の根管治療でも、痛みを取り、歯を残すための治療は行われています。しかし、再発した根管治療や、複雑な根管形態を持つ奥歯、過去に何度も治療を受けた歯では、短時間の治療や限られた器具だけでは十分な対応が難しいことがあります。

精密根管治療では、マイクロスコープで根管内を拡大して確認し、ラバーダム防湿で唾液による再感染を防ぎ、歯科用CTで根の形や病変の広がりを三次元的に確認し、ニッケルチタンファイルや適切な洗浄方法を用いて、感染源をできる限り減らしていきます。

これは、単に「高い治療」なのではありません。

保険診療ではどうしても制限されやすい時間、設備、材料、感染管理を補い、歯を残す可能性を高めるための治療です。

これからの歯科医療では「予防」がもっと評価されるべきです

歯科医療において、本当に大切なのは、悪くなってから治療することだけではありません。

むし歯を神経まで進行させないこと。

歯周病を重症化させないこと。

根管治療が必要な状態まで進ませないこと。

根管治療をした歯を再発させないこと。

抜歯にならないように、長期的にお口全体を管理すること。

これらは、すべて予防の考え方です。

日本歯科医師会は、8020運動やむし歯予防活動などを通じて、歯科医療が国民の健康維持に果たす役割を示してきました。また、令和4年歯科疾患実態調査では、8020達成者率が51.6%とされ、過去と比較して多くの歯を残す方が増えていることも示されています。

これは非常に重要な視点です。

医療制度として本当に評価されるべきなのは、悪くなってから削る治療だけではありません。悪くならないように管理すること、再発を防ぐこと、重症化を防ぐことも、本来は大きく評価されるべきです。

根管治療も同じです。

精密な根管治療を行って歯を残すことは大切です。しかし、それ以上に大切なのは、その歯を再発させないことです。そのためには、治療後の被せ物の精度、噛み合わせの管理、定期的な検診、歯周病管理、セルフケアまで含めた総合的な予防が欠かせません。

武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科では、保険診療を否定するのではなく、保険診療でできること、自由診療だからこそできることを分けて考えています。

患者様にとって大切なのは、「安いか高いか」だけではありません。

その歯をどれくらい長く使いたいのか。

再発リスクをどこまで下げたいのか。

将来的にどのようなお口の状態を目指すのか。

歯を残すことが、本当に長期的に良い選択なのか。

このような視点で治療を選ぶことが大切です。

抜歯を避けたい歯、何度も根管治療を繰り返している歯、過去に治療したのに再発している歯では、保険診療の範囲内で同じ治療を繰り返すだけでは限界がある場合があります。そのようなときに、精密根管治療や歯根端切除術という自由診療の選択肢を知っておくことは、歯を残すために非常に大きな意味があります。

保険診療と自由診療の精密根管治療の違い

根管治療は本来、非常に細かく、時間のかかる治療です。

過去の治療で入っている古い材料を外し、根管の入り口を探し、感染した部分を除去し、薬液で洗浄し、根の先まで緊密に封鎖するには、相当な集中力と時間が必要です。特に再根管治療では、初回治療よりも難易度が上がります。

保険診療では、治療費や使用できる材料、診療時間に一定の制約があります。そのため、1回ごとの治療時間が短くなり、複数回に分けて治療を進めることもあります。

もちろん、保険診療でも丁寧に根管治療を行っている歯科医院は多くあります。しかし、再発症例や複雑な奥歯の根管治療では、より精密な診断と時間をかけた処置が必要になることがあります。

自由診療の精密根管治療では、保険診療の枠組みに縛られず、1回あたりの治療時間をしっかり確保し、必要な器具や材料を用いて治療を進めることができます。症例にもよりますが、60分から90分程度の診療時間を確保し、マイクロスコープ下で丁寧に処置を行います。

近年のシステマティックレビューでは、現代的な非外科的再根管治療の治癒率について、厳格な評価基準では約78%、やや広い評価基準では約87%という結果が報告されています。Sabetiらの2024年のレビューでは、29本の研究を対象に解析し、現代的な非外科的再根管治療は、厳格基準で約78%、広い基準で約87%の根尖部治癒・成功率を示すと結論づけられています。

ただし、これはすべての歯にそのまま当てはまる数字ではありません。

病変の大きさ、根管充填の状態、歯の残っている量、歯周病の有無、歯根破折の有無、被せ物の精度、噛み合わせの力などによって、予後は大きく変わります。論文上の成功率はあくまで集団としてのデータであり、目の前の一本の歯に対しては個別の診断が必要です。

精密根管治療で行うこと

精密根管治療では、まず診断を重視します。

痛みの原因が本当に根管由来なのか、歯根破折がないか、歯周病由来の病変ではないか、噛み合わせの負担が関係していないかを確認します。

通常のレントゲン写真は二次元の画像です。根の重なりや骨の状態によっては、病変の大きさや位置を正確に把握しにくいことがあります。歯科用CTを用いると、歯や骨の状態を三次元的に確認できるため、根の先の病変、根管の湾曲、根の形、骨の吸収状態、歯根破折を疑う所見などをより詳しく評価できます。

治療時には、ラバーダム防湿を行います。治療する歯だけをゴムのシートから出し、唾液が根管内に入らないようにします。

根管治療は細菌との戦いです。根管内をいくら丁寧に清掃しても、治療中に唾液が入り込めば、再感染のリスクが高まります。ラバーダムは、治療の精度を高めるための特別なオプションというより、感染管理のために非常に重要な基本処置です。

マイクロスコープも重要です。

根管治療は、見えない場所を手探りで行う治療になりがちです。しかし、見えないものを正確に治療することには限界があります。マイクロスコープを用いることで、根管の入り口、古い充填材、歯の内部のヒビ、穿孔部、見落とされた根管などを拡大視野で確認しながら処置できます。

また、ニッケルチタンファイルを使用することで、湾曲した根管にも追従しやすくなります。

従来のステンレスファイルは硬く、曲がった根管では本来の根管の形から逸脱してしまうことがあります。ニッケルチタンファイルは柔軟性があり、専用モーターと組み合わせることで、根管の形をできるだけ保ちながら感染物を除去しやすくなります。

根管内の洗浄も非常に重要です。

根管の枝分かれや細かな部分には、器具が直接触れられない場所があります。そのため、薬液洗浄を適切に行い、必要に応じて超音波などを用いて洗浄効率を高めます。根管治療は「削る治療」というより、「感染をコントロールする治療」と考える方が実態に近いです。

それでも治らない場合に検討する歯根端切除術

精密再根管治療を行っても、すべての病変が治癒するわけではありません。

根管内から器具が届かない部分に感染が残っている場合、根の外側に細菌のバイオフィルムが存在する場合、根の先に嚢胞様の病変がある場合、過去の土台や被せ物を外すリスクが高すぎる場合などは、通常の根管内からの治療だけでは改善が難しいことがあります。

そのような場合に検討されるのが、歯根端切除術です。

歯根端切除術とは、歯ぐきを開いて根の先に直接アプローチし、感染の原因となっている根の先端部分と周囲の病変を取り除く外科的な歯内療法です。英語では apicoectomy、または endodontic microsurgery と呼ばれます。

現代的な歯根端切除術では、マイクロスコープ、超音波チップ、MTAセメントやバイオセラミック系材料などを用い、従来よりも精密に根の先を処置する方法が主流になっています。

根管治療が歯の頭の側から根の中にアプローチする治療だとすれば、歯根端切除術は根の先の外側から直接病変にアプローチする治療です。

再根管治療が「中から感染を取り除く治療」だとすると、歯根端切除術は「根の先の感染源を外から取り除き、根の先を封鎖する治療」と言えます。

歯根端切除術では、まずCTやレントゲンで根の先の位置、病変の大きさ、周囲の骨の状態、神経や上顎洞との距離などを確認します。特に下の奥歯では下歯槽神経、上の奥歯では上顎洞との位置関係を慎重に評価する必要があります。すべての歯が歯根端切除術に向いているわけではありません。

治療時には、局所麻酔を行ったうえで歯ぐきを切開し、根の先に近い骨に小さな窓を開けます。そこから根の先の病変を取り除き、感染源となりやすい根尖部を数ミリ切除します。一般的には根の先端約3mm程度を切除することが多いです。

根の先端部には側枝や細かな分岐が多いため、この部分を取り除くことで感染源を減らす目的があります。

その後、切除した根の断面をマイクロスコープで観察します。ここで重要なのは、根にヒビがないか、未処置の根管やイスムスと呼ばれる細い連絡路がないかを確認することです。必要に応じて染色を行い、微細な破折線を探します。

もし明らかな縦破折が確認された場合、その歯の保存は難しくなることがあります。

次に、根の先から逆方向に小さな穴を形成します。これを逆根管形成といいます。根の先を切っただけでは、根管内と骨の間に微細な交通が残ることがあります。そこをMTAセメントやバイオセラミック系材料などで封鎖することで、細菌や毒素が根の外へ漏れにくい状態を作ります。

最後に歯ぐきを戻して縫合します。術後は腫れや痛みが出ることがありますが、多くの場合は数日から1週間程度で落ち着いていきます。抜糸後も、根の先の骨が回復するには時間がかかります。レントゲンやCTで、数ヶ月から1年以上かけて治癒を確認していきます。

歯根端切除術の成功率

歯根端切除術の成功率は、従来法と現代的なマイクロサージェリーで大きく考え方が変わります。

昔ながらの外科処置では、肉眼や簡易的な拡大視野で根の先を切除し、根尖部の封鎖材料も現在ほど高性能ではありませんでした。そのため、成績にばらつきがありました。

一方、現代的な歯根端切除術では、マイクロスコープ、超音波による逆根管形成、MTAやバイオセラミック系材料などを用いることで、より精密な処置が可能になっています。

Pintoらの2020年のシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、現代的な歯内療法外科、つまりエンドドンティック・マイクロサージェリーの長期予後を検討し、ランダム化比較試験では成功率91.3%、前向き臨床研究では78.4%の成功率が報告されています。追跡期間は2年から13年で、生存率は79%から100%の範囲とされています。

つまり、歯根端切除術も「やれば必ず治る治療」ではありません。

しかし、適切な症例を選び、マイクロスコープや適切な封鎖材料を用いて行うことで、根管内からの治療だけでは改善が難しい歯を残せる可能性があります。

再根管治療と歯根端切除術を合わせた場合の成功率の考え方

患者様が気になるのは、「精密再根管治療をして、それでも治らなければ歯根端切除術まで行った場合、トータルでどれくらい歯を残せる可能性があるのか」という点だと思います。

現代的な再根管治療の成功率は、厳格な基準で約78%、広い基準で約87%程度と報告されています。

一方、現代的な歯根端切除術、つまりエンドドンティック・マイクロサージェリーの成功率は、研究デザインや追跡期間によって幅がありますが、おおむね78%から91%程度とされています。

この2つを単純に組み合わせて計算すると、かなり高い数字になります。

たとえば、再根管治療の成功率を78%、その失敗例に対する歯根端切除術の成功率を89%と仮定します。

再根管治療で治る確率が78%。

再根管治療で治らない確率が22%。

その22%のうち、歯根端切除術で89%が治ると仮定すると、追加で約19.6%が救える計算になります。

つまり、78% + 19.6% = 約97.6%です。

広い基準で再根管治療の成功率を86%、歯根端切除術の成功率を89%として計算すると、理論上は約98%台になります。

ただし、この数字をそのまま「当院で歯を残せる成功率は98%です」と表現するのは適切ではありません。

理由は明確です。

再根管治療で治らなかったすべての歯が、歯根端切除術の適応になるわけではないからです。

たとえば、再根管治療後に治らなかった原因が歯根破折だった場合、歯根端切除術を行っても保存は難しくなります。歯周病で骨が大きく失われている場合、歯質がほとんど残っていない場合、根の先が神経や上顎洞に近すぎる場合、被せ物を支える構造が弱すぎる場合も、歯根端切除術の適応にならないことがあります。

そのため、患者様向けに誠実に表現するなら、次のような考え方になります。

現代的な精密再根管治療では、論文上おおむね80%前後から80%台後半の治癒が報告されています。さらに、再根管治療だけでは改善が難しい症例に対して、条件が合えば歯根端切除術を行うことで、追加で歯を残せる可能性があります。単純計算では90%台後半の保存可能性が示唆されますが、実際には歯根破折や歯周病、歯質不足などで適応外となるケースもあるため、当院では個々の歯の状態を診査したうえで、現実的な見通しをお伝えします。

この表現であれば、論文データに基づきながらも、過度な成功保証にならず、医療広告としても比較的安全です。

歯根端切除術が向いているケース

歯根端切除術が向いているのは、根管治療や再根管治療だけでは感染源に十分アプローチできない場合です。

たとえば、過去に装着された土台が非常に太く、外そうとすると歯が割れるリスクが高い場合があります。このような場合、無理に土台を外して再根管治療を行うよりも、根の先からアプローチした方が歯にとって安全なことがあります。

また、根管内から何度も治療を行っているにもかかわらず、根の先の病変が残っている場合も検討対象になります。根の外側に細菌のバイオフィルムが形成されている場合や、根の先に限局した嚢胞様病変がある場合は、根管内からの治療だけでは改善が難しいことがあります。

根管の先端部分に器具が届かない場合もあります。

根管が強く湾曲している。

根管が石灰化している。

過去の治療で段差ができている。

器具が折れて残っている。

このような理由で、根管内から十分な清掃ができない場合です。このようなケースでは、歯根端切除術によって根の先を直接処置することが選択肢になります。

前歯や小臼歯では、比較的歯根端切除術が行いやすいことがあります。一方で、奥歯では根が複数あり、周囲の解剖学的構造も複雑なため、難易度が上がります。特に上顎洞や下歯槽神経との距離が近い場合は、慎重な判断が必要です。

歯根端切除術が向かないケース

歯根端切除術は、歯を残すための有効な選択肢ですが、すべての歯に行える治療ではありません。

まず、歯根破折がある場合は、基本的に予後が厳しくなります。

歯の根が縦に割れている場合、そこに細菌が入り込み続けるため、根の先だけを切除しても根本的な解決になりません。明らかな縦破折がある場合は、抜歯が適切となることが多いです。

重度の歯周病がある場合も注意が必要です。

歯を支える骨が大きく失われている場合、根の先の病変を取っても、歯そのものを支える力が不足していることがあります。歯根端切除術は根尖病変に対する治療であり、歯周病で失われた支持組織を根本的に回復させる治療ではありません。

歯質が極端に少ない場合も、保存が難しくなります。

根管治療や歯根端切除術によって根の病変が治ったとしても、被せ物を安定して装着できなければ、その歯を長く使うことは難しくなります。歯を残すかどうかは、根の治療だけでなく、最終的な補綴物を支えられるかどうかまで含めて判断します。

また、根の先が神経や上顎洞に近すぎる場合、外科的アプローチによるリスクが高くなることがあります。術後のしびれ、上顎洞への影響、出血、腫れなどのリスクを総合的に考える必要があります。

このように、歯根端切除術は「抜歯と言われた歯を何でも救える治療」ではありません。適応を見極めることが、治療の成否を大きく左右します。

抜歯の前に確認すべきこと

他院で抜歯と言われた場合でも、すぐに諦める必要はありません。

ただし、感情だけで「絶対に残したい」と判断するのも危険です。大切なのは、残せる歯なのか、残すべき歯なのか、残した後に長期的に機能する歯なのかを診断することです。

確認すべきポイントは、まず歯根破折の有無です。

根が割れている場合、保存の難易度は一気に上がります。CTやマイクロスコープ、歯周ポケットの状態、症状の出方などから総合的に判断します。

次に、歯周病の状態です。

根の先の病変だと思っていたものが、実は歯周病由来の骨吸収であることもあります。根管治療で治る病変なのか、歯周病治療が必要なのか、あるいは両方が関係しているのかを見極める必要があります。

さらに、歯質の残存量も重要です。

根管治療を何度も繰り返した歯は、歯の内部が大きく削られて薄くなっていることがあります。歯質が薄くなると、治療後に歯が割れるリスクが上がります。どれだけ根の先が治っても、歯が割れてしまえば保存は難しくなります。

最後に、最終的な被せ物と噛み合わせです。

根管治療後の歯は、適切な土台と被せ物で守る必要があります。特に奥歯は強い噛む力がかかります。歯ぎしりや食いしばりがある方では、ナイトガードや噛み合わせの調整が必要になることもあります。

武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科の考え方

当院では、根管治療を単独の処置として考えるのではなく、その歯が将来的にどのように機能するかまで含めて診断します。

根管治療だけがうまくいっても、被せ物の適合が悪ければ再感染する可能性があります。根の病変が治っても、噛み合わせの力で歯が割れてしまえば、その歯は長く使えません。

歯を残すためには、根管治療、補綴治療、噛み合わせ、歯周組織の管理を一体として考える必要があります。

また、当院では「何が何でも歯を残す」という考え方はしていません。

歯を残すことは非常に大切ですが、無理に残すことで周囲の骨を失ったり、感染を繰り返したり、将来のインプラントやブリッジの条件を悪くしてしまうこともあります。

大切なのは、患者様の「自分の歯を残したい」という気持ちを尊重しながら、医学的に現実的な選択肢を提示することです。

精密再根管治療で治る可能性があるのか。

歯根端切除術まで考えれば保存できる可能性があるのか。

それとも抜歯して次の治療に進む方が長期的には良いのか。

これらを丁寧に説明し、患者様と一緒に判断していきます。

成功率のまとめ

当時の東京医科歯科大学の須田先生の総説では、日本では保険診療として非常に多くの根管治療が行われている一方、根管処置済みの歯に根尖部X線透過像が高率に認められることが報告されています。このデータは、日本の一般的な根管治療において、治癒が十分に得られていない歯が少なくない可能性を示しています。

ただし、この論文は保険根管治療の成功率を直接追跡した研究ではないため、「成功率何%」と断定するのではなく、根尖部X線透過像の発現率から見て、治癒不十分なケースが多いことを示唆する資料として捉えるのが適切です。

一方、現代的な再根管治療では、近年のシステマティックレビューで、厳格な基準で約78%、広い基準で約87%の治癒・成功率が報告されています。

現代的な歯根端切除術では、研究によって幅はありますが、長期的なシステマティックレビューで78.4%から91.3%の成功率が報告されています。

この2つを段階的に組み合わせると、理論上は90%台後半の保存可能性が計算されます。しかし、すべての再根管治療失敗例が歯根端切除術の適応になるわけではないため、実際には症例ごとの診断が不可欠です。

患者様向けには、次のように考えるとわかりやすいと思います。

まず精密再根管治療で、おおむね80%前後から80%台後半の治癒を目指す。

それでも改善が難しい場合、条件が合えば歯根端切除術で追加の保存を目指す。

歯根破折、重度歯周病、歯質不足、解剖学的リスクがある場合は、保存より抜歯が適切になることもある。

つまり、精密再根管治療と歯根端切除術は、抜歯を避けるための二段構えの選択肢です。ただし、成功を保証するものではなく、歯の状態によって予後は大きく変わります。

まとめ:抜歯の前に、歯を残す選択肢を確認しましょう

根管治療後に再発した歯でも、すぐに抜歯と決める必要はありません。

現代的な精密再根管治療では、マイクロスコープ、歯科用CT、ラバーダム防湿、ニッケルチタンファイル、適切な洗浄・封鎖材料を用いることで、再発した歯でも保存を目指せる可能性があります。

さらに、根管内からの治療だけでは改善が難しい場合でも、条件が合えば歯根端切除術という外科的な選択肢があります。根の先に直接アプローチし、病変と感染源を取り除き、根の先を封鎖することで、抜歯を回避できる可能性があります。

もちろん、すべての歯を残せるわけではありません。

歯根破折、重度の歯周病、歯質不足、噛み合わせの問題がある場合には、抜歯が適切となることもあります。だからこそ、抜歯の前には、CTやマイクロスコープを用いた精密な診査が重要です。

また、保険診療と自由診療の違いを理解することも大切です。

保険診療は、国民全体に必要な医療を届けるための非常に重要な制度です。しかし、すべての症例に対して、最高水準の材料、設備、時間、審美性、個別最適化を提供する制度ではありません。

インプラント、矯正、セラミック、精密根管治療などは、患者様のお口の状態によっては非常に有効な選択肢になります。しかし、それらの多くは保険診療の枠組みでは十分に提供できないことがあります。

だからこそ、患者様には「保険でできる治療」と「自由診療だからこそできる治療」の違いを知ったうえで、ご自身にとって納得できる治療を選んでいただきたいと考えています。

「抜歯と言われたけれど、本当に抜くしかないのか知りたい」

「何度も根管治療をしているのに治らない」

「歯ぐきに膿がたまっていると言われた」

「できる限り自分の歯を残したい」

このようなお悩みがある方は、武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科へご相談ください。

患者様の大切な歯を残すために、精密再根管治療、歯根端切除術、そして必要に応じた補綴・噛み合わせの管理まで含めて、現実的で誠実な治療選択をご提案いたします。

参考文献・参考資料

須田英明「わが国における歯内療法の現状と課題」日本歯内療法学会雑誌 32巻1号, 2011年
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205188026752

Sabeti M, et al. A Systematic Review of Randomized Controlled Trials and Comparative Studies on Outcome of Contemporary Nonsurgical Endodontic Retreatment.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38280514/

Pinto D, et al. Long-Term Prognosis of Endodontic Microsurgery: A Systematic Review and Meta-Analysis.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32899437/

厚生労働省「医療保険」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/index.html

日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」
https://www.jos.gr.jp/facility

日本歯科医師会「令和4年度歯科疾患実態調査結果」
https://www.jda.or.jp/jda/release/detail_223.html

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