歯科コラムcolumn

歯周病学会ガイドラインから読み解く歯周病の世界【第5回・最終回】腎臓病・肝疾患・がんリスクまで――口腔ケアで全身を守る2026/05/05

全5回の最終回です。今回は2025年ガイドラインが新たに取り上げた「腎臓病・肝疾患・がん」との関係をご紹介し、シリーズ全体を通して「歯周病と全身の健康」についての実践的なまとめをお伝えします。

歯周病と慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下していく病態で、進行すると透析が必要になる深刻な疾患です。ガイドラインでは、歯周病とCKDの間にも有意な関連があることが示されています。複数のシステマティックレビューにより、歯周炎患者はCKDを発症するリスクが高い、あるいはCKD患者に歯周炎の重症例が多いことが報告されています。

また、CKD患者に歯周治療を行うと、腎機能の指標であるeGFR(推算糸球体濾過量)の低下速度が緩やかになる可能性を示した研究もあります。腎臓病を抱えている方は、透析やステロイド使用により免疫機能が低下していることが多く、歯周病が悪化しやすい状態にあります。歯科と腎臓内科の連携が特に重要な分野のひとつです。

歯周病と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

アルコールをほとんど飲まないのに肝臓に脂肪が蓄積する「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」は、生活習慣病のひとつとして広く知られています。ガイドラインでは、歯周病とNAFLDの間にも有意な関連があるとするエビデンスが示されています。歯周病菌や炎症性サイトカインが門脈を通じて肝臓に到達し、肝臓での脂肪蓄積や炎症を促進する可能性が研究されています。いくつかの介入研究では、歯周治療後に肝機能の指標(ALT・AST)が改善した例も報告されています。

歯周病とがんのリスク

ガイドラインの第2部では、「歯周病とがん」という項目も新たに加わりました。口腔内のマイクロバイオーム(細菌叢)のバランスが乱れる「ディスバイオーシス」が、大腸がんや膵臓がんなどの発症リスクと関連するという研究が増えています。特にFusobacterium nucleatumという口腔内細菌が大腸がんの腫瘍組織から高頻度に検出されており、がんの進行に関与する可能性が研究されています。この分野はまだ研究途上であり、エビデンスレベルは高くありませんが、口腔内の細菌叢が全身の健康に影響するという視点から注目を集めています。

5回シリーズのまとめ――「口の中を守る」ことは「全身を守る」こと

第1回から今回まで、2025年の最新ガイドラインをもとに、歯周病と全身疾患の関係を見てきました。心臓・血管、早産、誤嚥性肺炎、認知症、関節リウマチ、腎臓病、肝疾患、がん――これほど多くの疾患と歯周病が何らかの形でつながっているというのは、10年前には想像もできなかったことです。

重要なのは、「歯周病を治療することで全身疾患が改善する可能性がある」ということです。特に動脈硬化の炎症マーカーCRPの改善については「強い推奨」というガイドラインの明確な評価が下されています。歯周治療は、歯の健康だけでなく、全身の炎症を下げ、生活の質を高める治療として位置づけられています。

日常でできること・定期検診の重要性

歯周病は進行すると元には戻りません。しかし早期に発見し、適切な治療と継続的なメンテナンス(SPT)を行えば、進行を止め、全身への悪影響を最小化できます。日常では正しいブラッシング(歯ブラシだけでなくフロス・歯間ブラシも)を続けること、喫煙者は禁煙を検討すること、糖尿病の方は血糖コントロールと歯科管理を同時に行うことが大切です。そして最も重要なのが、定期的な歯科受診です。歯周病は自覚症状が少ないため、自己判断では気づきにくく、専門家によるプロービング検査とプロフェッショナルクリーニングが欠かせません。

武蔵小金井ハーヴェスト歯科・矯正歯科では、歯周病の検査・治療・継続管理(SPT)に力を入れています。「最近歯科に行っていない」「歯茎が気になる」という方は、ぜひ一度ご来院ください。全身の健康のためにも、口の中のケアを始めるのに早すぎることはありません。

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