歯科コラムcolumn

歯をなるべく削らずに補う選択肢 ― 接着性ブリッジという治療について2025/08/03

1本だけ歯を失ってしまったとき、「インプラントしかないのかな?」「入れ歯は抵抗がある…」とお悩みになる方も多いと思います。そうしたときに、検討いただきたい治療法のひとつが「接着性ブリッジ」です。

この方法は、失った歯の隣にある歯をできるだけ削らず、裏側にごく小さな処理を加えて人工の歯を接着する治療です。特に、片側の歯の裏側だけを使う「片側リテーナー型」の設計は、歯へのダメージを最小限に抑えながら、見た目も自然に仕上げることができます。

ただし、この治療法には大切な適応の条件があります。
それは、「前歯のみに限定される」ということです。

一見すると、小臼歯や奥歯にも使えそうに感じられるかもしれませんが、実際には噛み合わせの力がかかりすぎるため、接着部分が耐えられず外れてしまうリスクが高くなります。前歯は、もともと噛む力が比較的弱く、力の方向も比較的一定しているため、接着材の強度と歯の構造を活かしやすい部位です。一方で、小臼歯や臼歯では、強く複雑な力が加わりやすく、たとえしっかり接着しても、長期的な安定を得ることは難しいとされています。

当院でも、接着ブリッジを検討する際には、あくまで前歯の1本欠損に限定してご提案しています。特に外科処置を避けたい方や、インプラントを選ばない方にとって、前歯の欠損に対してこの治療法は非常に有効な選択肢になります。

また、近年では接着材や歯科用材料の進歩により、10年以上の使用でも90%以上の成功率が報告されている症例もあります。2011年の『歯科評論』においても、前歯部における片側リテーナー型の接着ブリッジが、適切な診断と設計、接着操作のもとで、長期安定性を発揮することが紹介されていました。

武蔵小金井ハーベスト歯科・矯正歯科では、歯をできるだけ削らない方針を大切にしながら、患者さん一人ひとりの噛み合わせ、歯の状態、ご希望を丁寧に確認し、無理のない形で治療法をご提案しています。

「インプラント以外の選択肢を知りたい」
「なるべく歯に負担をかけたくない」
そうお考えの方は、前歯に限定されますが、接着ブリッジという治療法もご検討いただければと思います。

どの治療にもメリットと制約があります。その中で、今のご自身に合った治療法を一緒に考えていくことが、私たちの役目です。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

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