• 2022/04/21
  • 歯科コラム

むし歯の深いお話し



歯はエナメル質、象牙質、セメント質、歯髄からなります。
人体で最も硬い組織といわれる歯ですが、残念ながらその組織を溶かしてしまう病気があります。
それがむし歯(う蝕)です。


                

1、むし歯について
むし歯とは歯の表面に細菌が付着し酸をつくり溶かしてしまう疾患のことをいいます。
むし歯は細菌による感染症のひとつで、ストレプロコッカスミュータンス菌、ラクトバシラス菌が主なむし歯菌といわれています。

2、むし歯の分類

歯科検診でよく耳にする「C1,2,3,4」という言葉は、むし歯の進行度を表しています。

CO・・・要観察歯。歯の実質欠損は認めないが、白い白濁(ホワイトスポット)が認められるもの
C1・・・エナメル質に限局したむし歯
C2・・・象牙質に達したむし歯
C3・・・歯髄に達したむし歯
C4・・・歯冠(目視できる歯の部分)が崩壊し、根っこ部分のみの状態

3、要因

むし歯には3つ(4つ)の要因があるといわれています。
①糖質
発酵性糖質とよばれるおもにスクロース(ショ糖)、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)を代謝して酸や毒素を産生します。
②細菌
上記でもありますようにS.mutans、Lactbacillusなどがあげられます。 
③宿主
解剖学的な歯の形態、歯質、歯列、唾液の性能などです。
(④時間 Newbrunの分類による)
この3つ(4つ)の要因が重なり合ったとき、むし歯のリスクが高くなるといわれています。

4、砂糖とむし歯の関連性


 
口腔内のミュータンス連鎖球菌群が砂糖から粘着性の不溶性のグルカンというものを産生し、それとともにミュータンス連鎖球菌群が歯の周りに付着します。いわゆる歯垢(プラーク)と呼ばれるものです。そしてさらに砂糖を代謝して乳酸やギ酸などの酸を産生します。Phが5.5以下になるとは歯は脱灰(溶けること)し始めます。
砂糖の間食回数が増えるにつれ、むし歯へのリスクも高くなる傾向にあります。
そこでむし歯予防として代用甘味料とういものがあります。
主なものに、キシリトール、ソルビトール、マルチトース、カップリングシュガー、パラチノース、アスパルテーム、ステビオサイド、グリチルリチンなど様々なものがあげられます。
例えば身近のものとして、キシリトール入りのガムがあります。
しかしキシリトール入りであっても砂糖が含有しているものもあり、100%キシリトール入りのものでなければキシリトールの効果(むし歯予防)は消えてしまいますので、表示をよく見て選択するようにしましょう。

5、唾液とむし歯の関係性

唾液中にはむし歯を予防する働きがあります。
食後に歯の成分が溶け出しその成分をもどすという唾液緩衝能という作用があるからです。

それぞれ様々な試験によりその人がどのような唾液の能力があるのか、菌の量はどれくらいいるのかなど調べることができます。
いくつかご紹介いたします。
①唾液緩衝能の測定 
  Dreizen testと Dentobuff STRIP という測定方法があり、唾液の力で酸性に傾いたPhを中性にもっていく力がそのひとにどれくらい備わっているのかを調べます。
②虫歯菌の量を調べる
  RDテスト、ミューカウント、オーラルテスターミュータンスなどこちらも様々な方法で定量できます。
 一般的に菌の数が多いほうがう蝕になりやすといわれております。
③唾液分泌速度の測定
  安静時唾液と言ってじっとして刺激を与えないときに分泌される唾液と刺激時唾液と言ってガムなどを噛んでもらって刺激を与えたときに分泌される唾液量を調べます。唾液量が極端に少ないとう蝕になるリスクが高くなると考えられています。

6、う蝕の予防法~セルフケアについて~

プラークを付着させない環境を整えるためには、日頃のブラッシングが重要になると考えられます。
プラークはむし歯や歯周病の原因になるだけではなく、誤嚥性肺炎、循環器障害などの全身の疾患にも影響を与えることがわかっています。

お口の中の清掃として、一般的に使用されているものに歯ブラシが挙げられます。
望ましい歯ブラシを選択するため、以下の条件があります。

①ブラシ部分はやや小さめで薄めのもの(複雑な歯の形態に適合するもの)
②ブラシ部分が細長くて奥歯までとどくもの
③握りやすいもの
④ブラシ部分の毛の硬さが自分自身の歯茎の状態に合っているもの

各ライフステージでお口の中の状況は変化していきます。
近年、歯ブラシはたくさんの種類が販売されており、自分自身に合った歯ブラシを選択するには専門家(歯科医師、歯科衛生士)によるアドバイスも必要だと考えます。
しかし、歯ブラシだけではすべてのプラークを除去することは出来ません。
そのためデンタルフロス、歯間ブラシ、タフトブラシの使用をお勧めします。

①歯間部(歯と歯の間)
②歯頚部(歯と歯茎の境)
③小窩裂溝(上下の歯と歯が噛み合う部分の溝)
④矯正治療中(ブラケット周り、ワイヤー部分)
⑤ブリッジ(ポンティックの基底面)

このような部分は歯ブラシだけでは十分にプラークを取り除くことは難しく、むし歯の発生も多い場所です。
そのため補助的清掃具は必要不可欠です。
これらの清掃具は市販でも気軽に購入できますが、歯ブラシと同様にたくさんの種類があるので、一度専門家に相談し、自身の歯の特徴を知り使用したほうが望ましいと考えます。
当院でもブラッシング指導を行っておりますので、お気軽にご相談ください。




次回は、う蝕の予防法~プロフェッショナルケアについて~のお話です。
プロフェッショナルケアとは具体的にどういったものなのかお話していきます。
よろしくお願いします。


                             ~参考文献~
医歯薬出版株式会社 歯科予防処置・歯科保健指導















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